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【読書感想】「中世ヨーロッパの城の生活」

中世ヨーロッパの城の生活 (講談社学術文庫)

牢固とまた堂々と風格を漂わせ、聳える城。西欧中世、要塞のような城が陸続と建造されていった。城作りはいついかなる理由で始まったのだろうか。城の内外ではどのような生活が営まれていたのだろうか。ウェールズ東南端の古城チェプストー城を例に挙げ、年代記、裁判記録、家計簿など豊富な資料を駆使し、中世の人々の生活実態と「中世」の全体像を描き出す。

Amazon内容紹介より

先日読んだ「中世ヨーロッパの農村の生活」と同じシリーズです。こちらは城の生活ですね。やはりこういったシリーズになっている本で始めに読んだ本が良い印象だと続けて読んでしまいます。大抵の場合は、少し間を空けてから読んだ方が次に読む本の印象も良くなることが多いのですが…。興味が盛り上がっている時に集中して読む、というのも1つの方法かと思うので、どちらが正解なのかは難しいところです。


さて「中世ヨーロッパの城の生活」です。こちらも「中世ヨーロッパの農村の生活」と同様にタイトルそのままの内容の本でした。ただし、中世ヨーロッパと言うとかなり広い範囲の事柄になりますが、本書においてはイギリスとフランスのいくつかの城に関しての記述がすべてでした。ドイツ・イタリア・スペインや東欧諸国の城についてはどうなのかな、という疑問はどうしても残ってしまいましたね。もちろん、それは農村についても言えることではあるのかも知れませんけれども、どちらかと言うと城の方が地域特性が強いような気がしましたので*1

ちなみに「中世ヨーロッパの城の生活」は以下の各章で構成されています。

  • まえがき チェプストー城
  • 第一章 城、海を渡る
  • 第二章 城のあるじ
  • 第三章 住まいとしての城
  • 第四章 城の奥方
  • 第五章 城の切り盛り
  • 第六章 城の一日
  • 第七章 狩猟
  • 第八章 村人たち
  • 第九章 騎士
  • 第十章 戦時の城
  • 第十一章 城の一年
  • 第十二章 城の衰退

本書も「中世ヨーロッパの農村の生活」と同様に各章30ページ前後でまとまってはいるのですが、本書の方がやや読みにくい印象がありました。それは基本的には自分は「生活」の部分に興味があるのであって「政治」には興味があまりないからなのかもしれません。城は生活の場であったのと同時に、やはり政治の舞台でもありましたからね。その辺りのことも本書ではしっかりと触れられていますから、その政治部分にはそれ程の興味を持てなかったのかもしれません。また同時に農村の生活と違い、こちらはイギリスとフランスのいくつかの城を舞台としているので、1つの村だけを舞台とした農村の生活よりも、話のまとまりが悪かったところがあったのかもしれませんね。各国の城の様子も知りたい、と思う部分と相反する感想ではあるので、どちらが良かったのかは正直わかりませんけれども。

ただ、第六章の「城の一日」や第十一章の「城の一年」などを始めとした、城の生活を淡々と記してある章は、当時としては豪華であっても現在の「城」と言う言葉から感じるきらびやかな印象からは程遠い、割りと地味な生活を感じさせてくれて興味深かったです。そして城の衰退していく過程は、城の政治的・戦略的価値の低下や城主たちのプライバシーの意識の芽生え、生活環境の改善欲求などが合わさって複合的な要因にあったというところは、非常に納得感がありました。政治的な意味はなくなっても、戦略的な意味がなくならなかったり、他の利用法を見出した*2城は存続し、最終的に現代では観光スポットになっているところを知ったら、当時の城主たちはどういう気持ちで眺めるのだろうなあ、とか思いましたね。


ところで本書は文庫にしては、そこそこの数の写真が掲載されてはいるのですが、モノクロですからかなり見難く、何となくなイメージを掴むだけの意味しかないのが残念でした。まあインターネット環境さえあれば、気になった城などを画像検索をすることで城の写真は大量に見付かりますから、それほど気にならないところではありますけれども。城の写真以外でも、文中で触れられている事例に関連するような当時の絵画などの写真の挿入は多いように思います。そちらは城の写真よりも見易い物が多いので、文章を読むだけよりも理解を深めることが出来るように思います。


そんな訳で「中世ヨーロッパの城の生活」は「中世ヨーロッパの農村の生活」に引き続き、とても興味深い読書になりました。同一ジャンルを読み続けると飽きが来てしまうのが嫌なので、少し間を空けてから「中世ヨーロッパの都市の生活」も読もうと思います。

*1:ちなみに「中世ヨーロッパの農村の生活」の舞台はイギリスのある1つの村だけです

*2:牢獄になるなど